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【江尻良文の快説・怪説】コミッショナーのキャンプ視察 思い出される“下田武三伝説”

 斉藤惇コミッショナー(79)は、3日にソフトバンク、4日に巨人とオリックス、5日には西武の宮崎キャンプ視察。9日からは沖縄に移動する。コミッショナーのキャンプ視察といえば、“下田武三伝説”が球史に輝いている。

 下田氏は1979年(昭和54年)4月1日から85年(同60年)3月31日までコミッショナーを務め、球界改革を次々と断行。巨人・王貞治が使用していた圧縮バットを「飛びすぎる」と禁止し、新設する球場には国際規格の広さを義務づけ、「日本シリーズでもパ球団本拠地ではDH制採用」も実現した。

 セ・リーグのオーナーたちの猛反発を受けても平然。巨人キャンプ視察時には「巨人の野球は公達野球」と言い放った。公達(貴族)のように野性味がないという手厳しい批判だった。

 駐米大使、最高裁判事などを歴任し、「公平無私」がモットー。筆者が当時、「セ・リーグが“下田降ろし”のための秘密会談を開催」との情報を得て、自宅に夜討ち取材を敢行したときも泰然自若。「一度自宅取材を受けてしまうと、すべてを受けなければいけなくなるので、勘弁してください。代わりに、この先に公衆電話があるので、そこから電話してくれれば必ず出ます」

 そう言って家の中に入っていった。当時は携帯電話などなかったから、教えられた公衆電話から連絡すると、どんな質問に対しても逃げたりかわしたりせず、丁寧に答えてくれた。まさに「公平無私」で懐が深かった。95年に死去。今の日本球界に、こんな大人物は見当たらない。(江尻良文)

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