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【小林至教授のスポーツ経営学講義】“大船渡・佐々木問題” 実はまだわかっていない「球数と投手の故障の因果関係」 (1/2ページ)

 高校野球の岩手県大会決勝で、大谷翔平以上の逸材とも言われる大船渡・佐々木朗希投手が登板を回避したことに端を発し、球数制限や過密日程など、これまでも折に触れて問題視されていた高校野球のありかたに関する議論が再燃している。

 あまり議論されていない視点を1つ提起してみたい。球数と投手の故障についての因果関係は、その研究の最先端を行くアメリカにおいても、実はまだわかっていないということである。

 2015年に発刊され、2年後に邦訳も出版された『剛腕』という本がある。日本語のサブタイトルが『使い捨てされる15億ドルの商品』とおどろおどろしいために、告発書の印象を与えるが、内容は、綿密なヒアリング調査に基づき、投手の故障防止のこれまでと現状を淡々と記した学術書に近いものである。

 そこに記載されているのは、MLB(米大リーグ)球団は投手との契約総額に年間15億ドルを支出しており、これはNBAの年俸上位200人を超える莫大な投資額であることと、その3分の1にあたる5億ドルが故障のために空費となっていることである。

 MLB機構も、球団も、選手も、この謎を解き明かすべく、医科学はもちろん心理学や宗教、果ては怪しげな俗説まで、得られる英知を総動員して解明を試みている。11年以降は、MLB球団の契約のもとにいるすべての選手の治療歴を共通のデータベースで管理するHITSという画期的な取り組みまで行われているが、なぜ故障するのか、根本的解明には至っていない。

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