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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】荒木大輔のすべてを破壊した“金属バットの金太郎”水野の驚弾! 今までの実況では追いつけない (2/2ページ)

 「今までの実況の通念を捨て、“金属バットの金太郎”に追いつかねば、あっという間に古臭く聞こえる」

 だが、私には水野に対応できる表現、対処法を持っていなかった。これではマズイとこの一発の直後に頭を働かせた。

 …ポイントはなんだ? これまでとの違いは何だ? 打った瞬間だ! その時点でホームラン確定だ! 「大きい」とか「伸びる」とか後追いではダメだ! そんなのもう、はやらない。即決だ! でも、どうすりゃ分かる? スイングか! いや、その前もだ! タイミングだ! ん? 更にその前もか? 投球のコースだ! そんなもんか?

 まだあるぞ! その時のカウント・得点・回数・ランナーの位置・アウトカウントもだ! もっとあるか? そうそう投手の心理…そうかとにかく早め、前倒し、集中して状況を把握し、そこで何か気配を感じ「行ったー!」だ。そうすれば次の興味を飛距離に切り替えられるぞ! どこまで飛ぶかだ! それ分かるかな? 基準があればな! あるさ! 頂点の高さで飛距離は推定できるぞ! そうすりゃ自然にテンションも決まる! そうなれば中継を見ている人を“事後の興奮”じゃなく“未来の興奮”に導けるかもね!…

 どんどん野球脳が活性し、アイデアがわきあがる。楽しくなっていた。結果任せとか投球・打球についていくのじゃ、金太郎には置いてきぼりにされるんだ。ここで気づかせてもらってよかった。

 頭に映像を浮かべ、どこに視点を置くかを確認しながら実況してみるとこうなる!

 荒木が投げる。水野が打つ。外角高めの直球だ。タイミングはジャストだ。いい角度でバットが下りてきた。ジャストミートした。間髪を入れず『行ったぁ! 完璧!』。

 そして、ボールを視野に入れながら飛球の頂点に視線を先行させ過去の選手の最高到達点のラインを設定し、超えるのではないかと予測できた時点で『とんでもない高さだ! どこまで飛ぶ-』。フェンスを越える確信を持てたとき、『まだ落ちてこない!』。落下着弾して『落ちた、はねた、ここまで来た! とてつもない大大大大、大ホームラーン! 水野2ラン、池田7対2、荒木大輔、呆然!』だ。

 「こんなの当たり前でしょ」という人が多いかもしれないが、これがなかなかできるものではない。ハイテンションで盛り上がれるのは、自分で判断できているからだ。私の実況のアゲアゲのタイミングが早いのは、あの時“金属バットの金太郎”が衝撃の未知の世界を見せてくれたからだ。

 ■小野塚康之(おのづか・やすゆき) 1957年5月23日、東京都生まれ。80年、学習院大からNHKに入局。以降40年間、主に高校野球、プロ野球の実況を担当し、名物アナウンサーとして活躍した。今年3月にNHKとの契約を終了しフリーに。現在もDAZN、日テレジータス、JSPORTSなどで実況家として野球中継に携わっている。