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【福島良一 メジャーの旅】イチローとダブる“野球少年”シューレス・ジョー

 今季限りで現役引退したイチロー氏(46)が草野球で帰ってきた。しかも、投手で16奪三振の完封&猛打賞という独り舞台。その、心から楽しんでプレーする姿を見て思い出すのが幻の名選手、ジョー・ジャクソンだ。

 1900年代初め、マイナー時代にスパイクが足に合わず素足でプレーした逸話から、愛称は「シューレス・ジョー」。“球聖”タイ・カッブが「最高のレフトだ」と称賛し、ベーブ・ルースがその打撃フォームをマネたという天才バッターだ。

 1911年インディアンス時代に新人最多記録の233安打をマーク。12、13年と2年連続リーグ最多安打を記録し、最多二塁打や三塁打も放ったが、意外にもタイトルとは無縁だった。その上に12回も首位打者に輝くカッブがいたからだ。

 さらに19年ホワイトソックス時代、ワールドシリーズで八百長事件に関与し、球界から永久追放。世に言う「ブラックソックス事件」だ。大陪審の法廷を出る際、少年ファンの「嘘だと言ってよ、ジョー」という悲痛な叫びが話題を呼んだ。

 その後、彼はセミプロチームの行く先々で正体がばれないように偽名を使ってプレー。やがて、故郷のサウスカロライナ州に戻り、酒屋を経営。その傍ら、草野球でピッチャーを務め、日が暮れるまで少年たちとのプレーに興じたと言う。

 当時は彼の行方に皆が興味津々だったようで、58年公開のミュージカル映画「くたばれ!ヤンキース」に前歴不詳の天才選手として登場。84年の映画「ナチュラル」では天才と呼ばれながら不幸な事件に遭った主人公のモデルとなった。

 そして、89年に映画「フィールド・オブ・ドリームス」が公開。アイオワ州の広大なトウモロコシ畑に造った野球場にシューレス・ジョーがやってきた。まるで野球の原風景のような美しい場所で無邪気にプレーする場面が印象的だった。

 そのシューレス・ジョーが持つ新人最多安打記録をイチローが更新。その時代を超えた2人の天才が境遇こそ違っても、大リーグの表舞台から去ったあとも純粋に草野球を楽しむ姿は、まさに野球少年だ。(大リーグ評論家・福島良一)

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