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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】村田兆治さんの“みなぎる本気” 解説者時代に見た驚きの光景とは… (1/3ページ)

 白いタオルを右手に握り手首を利かせてビュッと振る。汗が額から散り体中を伝う。室温90度超の小さな部屋でマンツーマンの指導が続く。『違う。違う。もっと上から振り下ろす。こう。こう』。立ち上がって身ぶり手ぶりで模範を実演してくれる。「こうですか?」『そうそう。よし。もう一度』。足を上げてオーバーハンドのピッチングフォームを反復する。

 『君も正しい投げ方を覚えなきゃ。シーズン入ったら中継するんだろ。立ち上がりがどうの、デキがどうの、フォームがどうのって言うんでしょ! 責任あるよ。喋(しゃべ)るんだからね』

 動作を繰り返し30回くらいになろうか。足元には汗で小さな水たまりができていた。「いやーきついっすね。これ」『何言ってんの、若いのにだらしないねエ』。まあ厳しいこと極まりない。キャンプ取材を終えた後の夕刻、仕上げの野球勉強会。ここはサウナだ。先生は村田兆治だ!

 この“恩師”を初めて意識したのは、1974年、私が高校生の頃だ。オールスター第3戦の8回、打席には大歓声を浴びて千両役者・長嶋茂雄が華やかに代打で登場した。カメラが切り替わったマウンドには新進気鋭の村田が映し出された。その姿には真剣勝負にメラメラと燃えるものを感じた。球宴の楽しいエンターテインメント的な雰囲気など微塵(みじん)もなく、まるでケンカ腰で鋭い視線を送る。

 手を前後にブラブラさせロッキングモーションを起こす。その反動を利用して力を込めて左足を高く上げ、スパイクの底が打者に見えるほど軸足に体重を乗せるヒップファースト、左肩が上がり、そこからグラブを腋(わき)の下に畳み込みながら両肩の位置を平行に戻し一気に右腕を真っ向から振り下ろす。“マサカリ投法”だ。

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