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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】40年目で初のノーヒットノーラン実況! “雰囲気”あった中日・大野雄大の快投 京田のエラーで“完全”途絶えたが… (1/3ページ)

 クシャクシャの笑顔でジャンプ! ジャンプ! ジャンプ! 両足跳び、蛙飛び、うさぎ跳び、渾身(こんしん)の3連発。9回を投げ切ったとは思えないほどのパワー爆発だ。2019年9月14日阪神23回戦、ノーヒットノーランを達成した大野雄大(中日)人生最良の日、私はナゴヤドームで今までに味わったことのない興奮を胸にマイクに向かっていた。アナウンサー生活40年目、初めてのノーヒットノーランの実況だった。

 大野は、抜群の素質の持ち主だ。交流戦で対戦したパリーグの主力打者に聞けば『速球の回転、切れ、角度、威力は12球団の左腕ナンバーワンじゃないですか』『フォークボールも、ツーシームもすごく鋭いですよ』と答えが返って来る。

 私も常々、パーフェクトやノーヒットノーランを演じるなら大野のようなパワーピッチャーだとイメージしていた。しかし、私が実況した登板では、立ち上がりからビュンビュンで「空振りが取れますし高めでも力がありますからねぇ。こりゃ打てないですよねぇ解説の○○さん」なんて調子よくやっているとパッカーンと1発食らうとか、「今日は力が抜けて制球が冴(さ)えてますねぇ解説の○○さん」なんて分かったように喋(しゃべ)っていると、ベースの端を少しずつ外れ始め「ン? あっ? エッ?」という間に3連続四球だったりすることが時々あった。

 私には、理由が分からず、予測もできず、大きく膨らませた期待がいきなり萎(しぼ)んでしまうのだった。「なんであんなに力があるのに豹変(ひょうへん)するの?」とか「どうして10勝止まりで10敗もするの?」そんな“???”が付き纏(まと)った。

 「次の試合こそは! 来季こそは!」で9年目。しかし、この日の大野は違った。緊張感、集中力、余裕、何だろう? 大野が何かを発しながら、私はそれを感じながら試合が進んで行く。立ち上がりからランナーを出さない。押さえ込む姿は何度も見せられてきたが、過去のようにドヤ顔でバットをへし折ったり、空を切らせたりではない。パワーピッチでもなく、小手先で調整するのでもなく、“淡々と腕を振る”のだった。目立つことは、ゴロの多さ、いい当たりでも守備範囲。上がれば平凡なフライ。三振は悉(ことごと)くボールを振らせる。それと126球のほとんどが低めだった。

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