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【何競技、書けるかな? to TOKYO2020】競泳・瀬戸大也 集大成への覚悟 五輪延期決定のときは喪失感で“抜け殻”に

 3月30日に発表された五輪の1年延期。順調だった選手は無念でしょう。延期決定後、この夏の顔になるはずだった瀬戸大也(25)=ANA=からは、なかなかコメントが出ませんでした。それだけで無念さは伝わっていましたが、4月10日、ようやく気持ちを世に出しました。

 「覚悟をもって東京五輪に向けてトレーニングや調整をしてきたからこそ前向きな発言ができませんでした。延期が決まったときは、喪失感で抜け殻になりました。自分はすぐ気持ちを切り替えて来年頑張りますなんて言えなかったし今でもまだ完全に切り替えられてない日々が続いています」

 瀬戸の4年間は、ずっと順調だったわけではありません。主戦場の400メートル個人メドレーで、リオ五輪から2018年まで、瀬戸は世界の3番手でした。瀬戸と萩野公介(25)=ブリヂストン=を上回る絶対王者だったのは、リオ銀のチェイス・カリッシュ(米国)。個人メドレーはバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎ、自由形の順で泳ぎますが、カリッシュの平泳ぎはハンパなく速く、少々のリードでは確実に逆転されます。平泳ぎの前にどれだけリードを奪えるか。瀬戸は勝つための泳ぎを決めました。

 簡単に言うと、前半から全力で飛ばし、後半落とさない泳ぎです。瀬戸が得意なバタフライを生かす戦略でもあります。全力で入ると、当然後半は苦しくなります。後半を落とさないため、瀬戸は高い乳酸値の中で泳ぐ「耐乳酸トレーニング」に地道に取り組みます。地味でキツく、一番嫌いな耐乳酸に取り組み続けたことで、前半から攻めても後半落ちなくなり、去年は4年ぶりの世界一に。

 そのまま緩めることなく記録を伸ばし続けたのは、リオの教訓があったからです。前回リオは「勢いで戦える」という練習で、予選でベストを更新したものの、決勝は勝てませんでした。リオの代表合宿で一緒だった金藤理絵(31)は、やれることは全てやり、やり残したことがない状態で臨み金メダル(リオ五輪200メートル平泳ぎ)。瀬戸は五輪内定後「自分も次は(金藤のように)やろうと思ったし、後悔したくない」と話していました。

 その言葉通り、集大成となる東京に向け、やれることを全て「覚悟をもって」やっていたことは記録が証明していました。しかし、今年の東京は目前で来なくなりました。

 多くの選手の人生を変えるかもしれない新型コロナ。選手たちにはこの試練に打ち勝ってほしいですし、そのためにも1日でも早く世界に平穏が訪れることを祈るばかりです。

 ■砂山圭大郎(すなやま・けいたろう) 1975年6月30日生まれ。山口県出身。早稲田大学卒。98年文化放送入社。松坂大輔投手の番記者やサッカーW杯実況などを経て、夜の若者向け番組のパーソナリティーに。月~金「斉藤一美ニュースワイドサキドリ」のスポーツ枠担当を機に、本格的に五輪競技の取材に取り組む。現在は他に「ラジオのあさこ」「田村淳のニュースクラブ」などを担当。特技はフィギュアスケート!? 40歳のとき、番組の企画で初挑戦。元五輪選手の八木沼純子さんの指導を受け、大会にも出場した。

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