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【清水満 SPORTS BAR】江川卓“汚名返上”への長嶋監督の気配り 初の甲子園で殺気立つ阪神ファンの前へ… (1/2ページ)

 42年前の11月21日、当時アマ球界ナンバーワン投手の江川卓さんが、ドラフト前日に巨人と電撃契約した。野球協約の盲点をついた“空白の1日”事件である。

 日本中を騒然とさせた契約は無効とされ、江川さんは阪神に指名されて翌年2月、コミッショナー権限でトレードによって巨人に移籍した。交換相手は人気絶頂の小林繁投手。そんな“ゴリ押し”!?に犠牲者が出た。江川さんは大バッシングを受けた。

 「あの時は辛かった。でも僕には野球しかないし、グラウンドで結果を出すしかなかった」

 後の江川さんの述懐。まさに“逆境”スタートだった。その後、資質を開花させて大エースになったが、忘れてはならないのが当時の長嶋茂雄監督(現巨人終身名誉監督)の存在である。江川さん“汚名返上”のための心配りがあった。

 印象的なシーンを覚えている。6月22日からの甲子園遠征、試合前からスタンドは異様なムードが漂っており、阪神入りを拒否したことでファンは殺気立っていた。

 初の甲子園に江川さんも青ざめていた。試合前のウオーミングアップ。長嶋監督が「走ってこい!」と背中を押した。

 グラウンドに出る。スタンドがどよめく。拍手もあったが、多くを占める阪神ファンからはヤジと罵声…。「コラッ、人でなし!」。聞くに堪えない言葉が飛んでいた。江川さんは耐え、走った。

 長嶋監督はその日、こう締めくくった。

 「江川も辛かっただろうが、これも試練。ここで逃げたら負けだ。これでスタンドのファンも気が済んだろう。もうこれ以上…ということはないからな。初遠征の仕事はこれで終わり」

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