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【田所龍一 虎番疾風録 Vol.49】江夏豊の21球…なんでスクイズ? 近鉄-広島の日本シリーズ(1979年) (1/2ページ)

 近鉄-広島の日本シリーズ。3勝3敗で迎えた第7戦は11月4日(1979年)、大阪球場で行われた。翌80年「Number」(文芸春秋)創刊号に掲載されたノンフィクション作家、山際淳司の『江夏の21球』で一躍注目されたあの一戦である。

 その日、筆者はネット裏記者席の最前列に座っていた。回を追うごとに近鉄担当記者たちが後ろの席へ移動していく。見ると皆、下を向いている。感極まり、直視できない状態だったのだ。そんな中でドラマが展開された。

 1点を追う近鉄、九回裏の攻撃。(1)先頭の羽田耕一が中前打で出塁(2)羽田の代走藤瀬史朗が二盗。水沼四郎の送球を高橋慶彦が後逸し藤瀬は三塁へ(3)アーノルド四球。代走吹石徳一が二盗(4)平野光泰が敬遠の四球で無死満塁(5)山口哲治の代打佐々木恭介が空振り三振(6)一番石渡茂が1ストライク後の2球目をスクイズ。この構えを見た江夏豊がカーブの握りのままウエスト。三塁走者藤瀬が三本間で挟殺(7)石渡が空振り三振。マウンドに走ってきた水沼に江夏がジャンプして抱きついた。

 〈なにしてんねん〉

 江夏の凄(すご)さより近鉄が情けなかった。石渡への一球もバットを投げ出せば、けっして当てられないウエストではなかった。というより、なぜスクイズなのか-。西本監督は試合後「あれもひとつの方法やと思う。タイにしてランナーが残れば…」としょんぼりと振り返った。

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