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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】レジェンド始球式に登板 甲子園に帰ってきた“怪童”中西太氏 (1/3ページ)

 2018年夏、甲子園に85歳の怪童・中西太さんが帰ってきた。全国高校野球選手権100回記念大会。夏の大会で活躍した歴代の名プレーヤーたちが毎日第1試合の開始時に行う“レジェンド始球式”だ。8月18日、朝日をいっぱいに浴びた中西さんが真っ白な運動靴を履き、焦げ茶色の土の上、マウンドに向かう。私は銀傘の下で拍手を送りながら思い出に浸る。

 1995年から97年のオリックスの黄金時代、イチロー、田口壮、谷佳知…若い力がグングン伸びて華やかなりし頃、中継や取材で本拠地・グリーンスタジアム神戸(現ほっともっとフィールド神戸)に通う毎日が楽しかった。試合前の早出の打撃練習から見どころ満載だった。バッターボックス後方にしつらえたネットに向かってイチローが1球目からやる気マックスのスイングで打ち始め、ほぼ全球を芯で捉える。鋭いインパクトの音とともに網を突き破りそうな勢いの打球は見応え十分だった。

 でも若手中心に連日行われる練習で私が視線を張り付けていたのは選手ではなく指南役のコーチの方だ。リズミカルにトスを上げる、そのボールさばきは芸術品、職人の技、しなやかな手首、指先からマジシャンがカードを扱うように繰り出される。「ホイッ! ホイッ! ホイッ!…」心地よい合いの手とともに。声の主は中西ヘッドコーチだ。黒いサングラスがギラギラと照り付ける夏の太陽をはね返す。95年当時62歳。ここにいると自然と中西さんを追ってしまう。選手はもちろん、周囲の誰でも引き付けるコミュニケーションとパフォーマンスの持ち主だからだ。

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