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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】レジェンド始球式に登板 甲子園に帰ってきた“怪童”中西太氏 (2/3ページ)

 まず、練習前に『田口はここんとこ突っ込んで調子落ちとるからそこだけ言うたるわ! 大丈夫、大丈夫、力のある選手だから一言で戻る。エヘッ!』『谷は昨日2本打ったから今日は3本打つよ! 若い奴は乗せると行くからねぇ。フフッ!』と誰に話しかけるともなく報道陣の前を楽しげに通り過ぎる。“選手に優しいなぁ”とか“今日の練習の個人テーマはそれか!”とさりげなく気付かせてくれる貴重なつぶやきだった。

 そして中西道場、いや劇場が始まる。全身を使った大げさにも見えるパフォーマンスが絶品だ。例えばツイストと呼ばれる打撃の指導、内転筋に意識を持って下半身をしっかり締めてスイングを始め、インパクトの瞬間から腰を逆回転させる。反動で上半身が、より強くシャープに回転しバットが走る。これだと体が開きにくいという打ち方。その模範演技をする中西さんの姿、体をグニャグニャさせながらしなやかな演技。

 分解写真を滑らかにしたような動きで体の止まり方や反動を生かす様子を見事に示し、全力で3度、4度とスイングする。選手にとってはテンポよく繰り返され、ビジュアル的で残像を伴い覚えやすかったという。しかも最後は腰に手を当てよろよろとしたポーズをとるなどしてオチが付くのでパントマイムを見るような楽しみもあった。押し付ける感じが全くなかった。

 さらに、毎日のように特打ちで打撃投手を務める、緩いボールできっちりスイングさせ、1打1打について質、方向、距離、コンタクトしたときの音まで確認し、良い内容だと静かに褒めて口元を緩め、結果が悪いとポイントを一言で伝えていく。打ち込む側の選手にどんどん力が籠っていった。中西さんのリードで技術が上がり修正されていく。正に名伯楽といわれるゆえんだろう。大汗をかき、またわざと足元フラフラさせながら引き上げていく表情には満足感が漂う。この“ナカニシ劇場”にははまる。そばで見ている私も指導を受けた気になる。明日も、明後日も、「見たい。聞きたい、学びたい」となるのだった。

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