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【あの名場面の裏側】G戦士編 江川・小林「因縁の対決」 長嶋監督の胸の内 (1/3ページ)

 雨が降っていた。江川卓の顔は汗と雨でぬれている。1980年(昭和55年)8月16日、まだドーム球場ができる前の後楽園球場での巨人-阪神戦。江川が初めて阪神・小林繁(故人)と対決した試合だ。2人は回が終わるごとにアンダーシャツを着替えて投げ続けた。

 「負けられない。絶対に。球団のためにもいつもかばってくれた長嶋(茂雄)監督のためにも負けてはいけない勝負なんだ」

 江川はそう心に言い聞かせて投げた。

 まさに“因縁の対決”だった。この前年、巨人はドラフト前日の「空白の一日」に江川卓と電撃契約。ドラフト破りと大騒動になり、翌日のドラフトで指名した阪神とトレードするというコミッショナー裁定で決着した。

 そして阪神は江川を巨人に渡す見返りとして小林を選んだ。当時の小林は伸び盛りで自主トレから絶好調。「今年は小林を中心とした投手陣で優勝する」と長嶋監督が最も期待していた投手だった。

 そんなエース候補がライバル球団の阪神に移籍したわけで、実際、そのシーズン、巨人は小林にこっぴどくやられる。小林は放出された怨念もあってそのピッチングには鬼気迫るものがあり、巨人は小林に8連敗、これが響いて5位に低迷したのだ。あまりに小林にやられ続けたため「こうなったら調子が上がってきたルーキーの江川をぶつけるしかありません」と杉下茂投手コーチたちは監督に江川で打倒小林を図ることを勧めた。

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