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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】高校野球に学ぶ「困難で輝く選手」 頼もしい自立心が未来のヒントに (1/3ページ)

 「今ありて」と「栄冠は君に輝く」。

 春夏の大会歌が交互に甲子園球場に流れる。8月10日スタンドに立って不思議な気分だった。

 「甲子園高校野球交流試合」-。中止になったセンバツに出場する予定だった32校を招待して各チーム1試合だけ甲子園でプレーする大会だ。2つの曲を聞きながら随分長い時間が経過したのだと実感した。球春の主役たちが盛夏の球宴の季節に集う。いつものようにグラウンドで取材する形で選手たちを迎えるわけにはいかず、遠くから眺めながらつぶやくしかなかった。「おめでとう。ようやくここにたどり着いたんだね」「ご苦労さま。さぞや道のりは険しかったことだろうね」と…。

 開幕試合の花咲徳栄(埼玉)がグラウンドに姿を見せる。入場を許可されている父母の皆さんが拍手を送る。温かく思いのこもった手を打つ音が銀傘に響きながらいつまでも続いた。目頭を押さえるしぐさをするお母さんもいた。目の前で選手たちの苦悩を見つめてきた皆さんにとっては夢の舞台にお子さんたちが立てたこの瞬間に特別な感情が込み上げたに違いない。

 選手たちはダッグアウトで準備を整え飛び出していく。全国制覇の経験を持ち甲子園の素晴らしさを知り尽くす岩井隆監督は、選手たちにじっくりキャッチボールをするように指示したようだ。3塁側からレフトにかけての緑の芝生の上で丁寧にボールを受け投げ返す。1球ごとにお互いに声をかけあっている。特に最後の夏になる3年の姿には、野球を、仲間を大切にという思いが感じられた。

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