記事詳細

【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】高校野球に学ぶ 享栄・近藤真一VS高知商・岡林洋一 大会中に不祥事発覚で葛藤を抱えたまま実況 (1/3ページ)

 甲子園の全国放送実況デビューの年、いまだに心がひりひりする感覚が残っている試合がある。1986年夏3回戦、愛知の享栄対高知商、伝統強豪校同士の対戦だ。

 享栄には、プロ注目の大型左腕・近藤真一(元中日・近藤真市)が、高知商には、完成度の高い本格派右腕の岡林洋一(専修大~元ヤクルト)がいて、両チームともに戦力が整い屈指の好カードであった。

 ところが単純に試合を楽しめるような状況ではなかった。この大会の期間中に不祥事が発生。享栄のベンチ入りメンバーの喫煙現場が写真雑誌にスクープされたのだ。2回戦の前夜の出来事だった。大会期間中の不祥事発覚は春夏通じて初めてのことだった。私たち放送関係者の間にも衝撃が走った。事実関係はどうなのか? まさか出場停止、試合がなくなるのでは?

 そんな中で享栄が迅速に動いた。喫煙した当該2選手の選手登録を抹消して謹慎にし、責任教師(部長)が引責辞任するなど学校側が独自の処分を示した。これに対し日本高校野球連盟は享栄の対応が早かったこともあり残りの13人のメンバーで大会を最後まで戦うことを認めた(当時出場登録選手は15人)。

 翌日の2回戦は異様な雰囲気の中でゲームが行われ、近藤の力投もあって2対1で山梨の東海大甲府を破った。そして次の3回戦が私の担当だった。本来なら、「好投手同士の息詰まる投手戦をどう伝えるか。不祥事発覚前の1回戦では佐賀の唐津西を1安打に抑え15三振を記録した近藤の奪三振ショーを、一方、コントロールの良い岡林が築く凡打の山を、それぞれどう描くか」とか、「両チームの攻撃陣の相手エースの攻略法は!」など、ワクワクしながら準備を進めたはずである。

関連ニュース