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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】高校野球に学ぶ 藤川球児は手本(上) 喜怒哀楽がビビットに伝わる“理想の球児” 高校野球ファンにとって一生忘れない選手に (1/4ページ)

 2020年11月11日緊張してマウンドを見つめた。穏やかな表情でサインを受けプレートに足を置く。左足を引き上げて軸にしっかり乗せる。寸分の乱れもなく立つ姿は美しい。ここからキャッチャーミット、ターゲットに視線を注ぐ。マウンドの傾斜に沿ってジェットコースターのように下半身が下降を始める。リリースポイントのただ1点に向かって真っ向から投げ下ろす右腕が撓り最前方で「ピシッ!」と音を立てて指先からボールが離れる。

 ものすごい回転が加わった速球が空気を切り裂き打者に突き進む。摩擦でボールに着火、炎を上げ“火の玉ストレート”となる。人さし指と中指の間を密着させ指先を少し立てた独特の握りは極限のパワーを生み出すのだった。自信満々の巨人の強打者たちのバットが次々と空を切る。首をかしげつぶやきが聞こえそうだ。「何でだ? 当たらない!」まさにきりきり舞いだ。

 代打で登場した坂本勇人(巨人)はアウトコースのベルトよりやや低めの148キロのストレートに空振三振だ。ジャストタイミングで力強いベストスイングに見えた。引退登板の相手にニコリともせずに悔しさを湛えた表情でベンチに下がった。誰でも本気にさせるストレート、藤川球児(阪神)はどんな時でも真剣勝負の果たし状を突き付ける快男児を通した。

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