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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】高校野球に学ぶ 藤川球児は手本(上) 喜怒哀楽がビビットに伝わる“理想の球児” 高校野球ファンにとって一生忘れない選手に (2/4ページ)

 劇画調で大げさかもしれないが最後のマウンドも私にはそう映った。これほど期待のイメージを壊さない投球を披露して引退するピッチャーを見たことがない。「辞めるなんてもったいない」とか「まだやれる」ではなく「今日もいい勝負を見せてくれた」。気付くとラスト登板で「さすがプロフェッショナル!」と最後までうならされた。

 試合以外でも多くのことを示してくれた。私は監督やコーチ、選手、解説者の方々などに貴重な技術論などを伺うが、素人なので本当のことは良く分からず、いつも耳学問である。それを自分なりに理解するために勝手にそれぞれの選手の動きに照らし、確認ができたとき、分かった気になるのだった。投手についてはキャッチボールの練習を取材するのがその一つだった。中でも藤川は先生だった。特に雨の日は室内練習場で行われるので間近で見られる絶好の教室になった。

 投手にとってフォームは大切で、多くのチェックポイントがあるようだが、軸足に体重を乗せることはとても重要だそうだ。みな意識しながら長目に重心を置く。言葉では簡単だが、真横から見ていると繰り返し行う内に体が微妙に揺れたりスパイクの内外側に体重が移動して微動が生じることがある。が、藤川は地面にスパイクの底が張り付いているかのように常に安定している。「これなんだ! 皆が目指している理想の立ち方!」と一人納得しながら見つめた。

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