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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】高校野球に学ぶ 藤川球児は手本(上) 喜怒哀楽がビビットに伝わる“理想の球児” 高校野球ファンにとって一生忘れない選手に (3/4ページ)

 今度は藤川のキャッチボールの相方の後ろに回り込む。30メートル、40メートルと間隔が広がっていく。距離が離れればコントロールのブレや軌道、球質などに若干乱れが生じるものだが藤川にはそれがなかった。まず弾道は低く受け手は1歩も動かずキャッチする。軌道は真っすぐかややドライブ、ドロー気味の、力のあるボールで、全くシュート回転が生じない。しかもロングスローなのに反動を付けず、先ほど紹介したじっくり体重を乗せるスタイルでどこまでも続ける。投手グループの中で1人だけ異質の輝きを放って見えた。私は完成されたお手本として目に焼き付けていた。

 遡(さかのぼ)り1997年79回選手権大会、高知商業の2年生で兄・藤川順一とのバッテリーで登場した。兄弟出場しかも投手と捕手、兄がリードし、弟がそのミットめがけて思い切り腕を振る。こんなにも絵にかいたような兄弟出場選手は貴重だったし、何と言っても“球児”という名前に一瞬にしてマスコミは飛びつき周囲は注目した。この命名に対し本人は引退のスピーチでご両親に大いに感謝していたが、高校野球ファンにとっては一生忘れない選手となった。

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