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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】高校野球に学ぶ お好み焼き屋で見た“逆転のPL” 試合終了を待たずに甲子園をあとにした小早川だったが…78年夏の準決勝は「PL学園の歴史の分岐点」 (1/4ページ)

 「高校野球にはドラマがある」とよく言われる。だが見逃した、知らなかったものも数多くある。だからそれらに行き当たることはこの上なく楽しいものだ。今回はそんな話だ。

 「あんたたちPL学園かい? 試合、大変なことになってるよ!」

 1978(昭和53)年の夏、甲子園球場の近くのお好み焼き屋のおばちゃんが店に入ってきた選手に掛けた一言である。声を聞いたのはPL学園の現役野球部員。ベンチに入れず、直前の8回裏までスタンドで応援していたメンバーたちだ。

 大阪・PL学園と愛知の中京(現在の中京大中京)との準決勝、試合をアルプススタンドで見つめゲームセットを迎える前に『負けた』と判断し席を立ってここまで歩いてきたのだった。そのひとりに小早川毅彦(PL学園~法政大学~広島~ヤクルト、現在NHKプロ野球解説者)がいた。当時2年生。入学当初から力を認められレギュラーとして中軸に座っていたスラッガーだ。しかし、この大会の前に膝に水がたまり通常登録選手から外れていた。だから甲子園のアルプスで応援していたのだが…。

 甲子園ではベンチに入らない野球部員はアルプススタンドで一体となって声をふりしぼるのが定番。ところがこの時のPL学園はちょっと特殊だ。観戦はするが応援の義務はない。当時のカラーボードを駆使した人文字に参加することも、ヒッティングマーチに唱和する必要もなかった。

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