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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】高校野球に学ぶ 名勝負を掘り起こせば(下) V9戦士・柴田と高田を生んだ因縁 (3/3ページ)

 高田にとっては衝撃だった。『ここまでの経験では、シングルヒットで1塁ランナーがホームまで帰ってくることなどなかった。全く予測もしていなかった。柴田さんの走塁で“野球は何が起こるかわからない”ということを思い知らされた。その後の野球人生の支えとなっている』と、このプレーを振り返る。この大会でチームは全国制覇を果たしたもののその陰で高田は大きな課題を突き付けられた。

 法政二の意表を突いた戦術にまんまとしてやられたわけだが、結果的には高田が柴田に教えられたことになる。それは高田が重要性に気付き、直後から糧としたからだ。

 そして最も備えができている成熟した学生選手と高い評価を得るまでに成長してプロ入りし、再び因縁の柴田と同じチームで顔を合わせる。今度はコンビを組むこともあり巨人のV9という偉業の大きな戦力となる。“甲子園のとっておきの名勝負”が“プロ野球最強軍団V9戦士”を生んだのだった。

 なんと野球の楽しみとは奥行きの深いものなのだろうか。過去を知り、掘り起こしたらつながった。私の思いではさらに輝きを増す宝物となった。

 これで高校野球に学ぶシリーズはいったん終了、新年からは“縦断高校野球列島”と題して47都道府県をテーマにそれぞれの地方への思いをつづる。

 また、12月29日15時から今年のプロ野球を振り返るインターネット無料音声配信番組トークライブ“実況家・小野塚康之に見えた2020プロ野球”で当コラムの中から数本朗読する。お楽しみに!

 URL:https://talklive-20201229.platcast.iodata.jp/

 ■小野塚康之(おのづか・やすゆき) 1957(昭和32)年5月23日、東京都生まれ。80(同55)年、学習院大からNHKに入局。以降40年間、主に高校野球、プロ野球の実況を担当し、名物アナウンサーとして活躍した。今年3月にNHKとの契約を終了しフリーに。現在もDAZN、日テレジータス、JSPORTSなどで実況家として野球中継に携わっている

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