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【実況・小野塚康之 時代を超える名調子】縦断高校野球列島(4)秋田 目が離せない!公立の星たち 金足農業、個々の工夫と太い絆で“カナノウ旋風” 県立秋田、追いつかれても逆転されない精神力 (1/3ページ)

 秋田勢の躍進には心躍る!

 史上最多の101万5000人が入場した2018年100回の夏。主役は準優勝の金足農業、小さな大投手・吉田輝星を擁し“カナノウセンプウ”を巻き起こした。“旋風”は多くのチームのキャッチフレーズになってきたが、最も熱く強烈な風になった。

 “公立の模範”“農業高校の星”と称された魅力たっぷりの秋田代表。小柄な剛腕がバッタバッタと相手を薙(な)ぎ倒す。勝負どころで一発が飛び出す。知恵と工夫の戦術で痛快に競り勝つ。好投手吉田の金足農業進学にわれもわれもと集まった秋田の兵どもが3年間で実現した芯の太いチームだった。

 中泉一豊監督は厳しい練習で心身ともに強い選手を育んだ。雪上の走り込みや竹バットの使用など昭和の香りもプンプン漂ったが、自主性も重んじ生徒間の議論などは活発にさせ、エキサイトしてつかみかからんばかりになってもギリギリまで口出しはせず、引くところは徹底的に引いた。

 1年を通して選手に声を荒らげることはほとんどなかったという。個々の考える力を引き出し、選手間に揺るぎない絆も生んだ。気持ちも環境も非日常的な甲子園、この特別な舞台でそれがモノを言った。

 記憶に刻まれた準々決勝の滋賀・近江戦。“逆転サヨナラ2ランスクイズ”に私も正直驚いた。

 1-2とリードされた9回裏無死満塁の攻撃、一般論では2ランスクイズはあり得ない。結果として2人が生還することはあるが、2塁走者までスタートすると失敗した場合のトリプルプレーのリスクがあり、これは避ける。まず同点、次のステップでサヨナラが狙いだ。

 9番の斎藤璃玖がバント、この時2塁走者・菊地彪吾もスタートしていた。ネット裏の私も腰が浮き指さして『うわぁ!』と声を上げた。守る近江はバントを警戒していたが、わずかな連携の間を突いて菊地彪吾が3塁を蹴り、決勝のホームに滑り込んだ。場内はまさに興奮の坩堝(るつぼ)と化した。唖然(あぜん)騒然‥。

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