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【ロバート・ホワイティング サクラと星条旗】あわやマー君も被害「ヘイトクライム」を冷静に考えよう 「爆弾仕掛ける」脅迫、白人優位社会の脅威 (4/4ページ)

 大変残念なことだが、リベラルで知られる多くの米国のメディアは白人優位社会の脅威をことさら誇張して訴える余り、現状を悪化させ、ソーシャル・メディアがこれに輪をかけている。これがアジア系米国人のデモ行進にもつながっているといえないだろうか?

 考えてみて欲しい。ニューヨークに住むアジア系米国人は現在120万人。彼らに対するヘイトクライムは2019年の3人から2020年は29人に増えた。パーセントで考えると大変な急増だが、決して米国内で巨大なうねりとなっているとはいえない(ボストンは6人から14人。ロサンゼルスは7人から15人)

 そうした中、全米の注目を集めたのは3月16日に米ジョージア州アトランタ近郊でマッサージ店3軒がロバート・ロングという21歳の白人男性に銃撃され、6人のアジア系女性を含む8人が死亡した事件だった。

 ニューヨーク・タイムズ、CNNなどはこれを即座にヘイトクライムだと報道。ジョー・バイデン大統領とアジアにルーツをもつカマラ・ハリス副大統領はすぐにアトランタに飛んだ。しかし、その後の取り調べで、ロング容疑者は敬虔なクリスチャンで重度のセックス依存症。こうした施設さえなければ、苦しまないですむと犯行に及んだことが分かった。

 もうひとつ、リべラルな米国の新聞が無視しているのは、冒頭で紹介したサンフランシスコ、NY、LAで起きた事件の加害者がいずれもすべて黒人だったことだ。

 反アジアの感情が米国内で上昇していることを否定することはできない。しかし、こういう時代だからこそ、すべての事象を様々な角度から観察して、冷静な判断を下そうとする努力が大切になっているのではないだろうか?

 ■Robert Whiting 作家。米ニュージャージー州生まれ。『和をもって日本と成す』(1990年)で日本のプロ野球の助っ人外国人を描き、独特の日米文化比較論を展開した。この逆バージョンともいえる本コラム「サクラと星条旗」は2007年から好評連載中。