記事詳細

【田代学 ダッグアウトの裏側】「人種差別」と球宴開催地変更 コロナ禍だけではない米大リーグが直面する難題

 米大リーグが直面している難題はコロナ禍だけではない。米国で急増しているヘイトクライムや人種差別への対応も、そのひとつだ。

 ロブ・マンフレッド・コミッショナーは2日(日本時間3日)、7月13日(同14日)に予定しているオールスター戦の開催地を、ジョージア州アトランタから変更すると発表した。南部の同州では3月に投票権を事実上制限する州法が成立。黒人らマイノリティーの投票を妨げるとみられており、バイデン大統領も「非米国的な法律」と批判している。

 「大リーグは米国民すべてが投票権を持つことを支持しており、制限に反対する。われわれの価値観を示す最良の方法として変更を決めた」と同コミッショナー。州法を支持するトランプ前大統領が「自由で公正な選挙を妨げようとする野球をボイコットしよう」と呼びかけるなか、新たな開催地は4月6日(同7日)にコロラド州デンバーと発表された。

 大リーグが早々に反対の姿勢を明示したのには、さまざまな理由がある。今季の球宴でナ・リーグを指揮するのは、昨季の覇者ドジャースのデーブ・ロバーツ監督。黒人の父と日本人の母の間に沖縄で生まれた同監督は、開催地が変更されなければ辞退する意向を示していた。

 球宴では、今年1月に86歳で亡くなった元ブレーブスのハンク・アーロン氏の追悼式典も予定されていた。人種差別を乗り越えて歴代2位の通算755本塁打。州内が対立している状況では、引退後に球団幹部も務めたレジェンドをしのび、功績をたたえる雰囲気にはならないだろう。

 大リーグ機構から公表されたデータによれば、今季開幕ロースターの28・3%(256人)が米50州以外の出身選手。統計を始めた1995年以降では3番目の多さで、近年は「多国籍軍」となる球宴の舞台としてアトランタはふさわしくなかった。

 アジア系住民に対する暴行事件が増えているのも心配。コロナ禍が収束しても、渡米しての大リーグ観戦はためらってしまう。(サンケイスポーツ編集局次長・田代学)

関連ニュース