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松山英樹はなぜマスターズで勝てたのか 変化したスイングやショットなどをツアーコーチ・石井忍が解説

 松山英樹選手(29)が、日本人選手初のマスターズ優勝を成し遂げました。アマチュア時代から出場し、今回で出場10回目を数える節目での大快挙です。

 今年1月の初戦から松山選手は思うような成績を残せず、マスターズ前まで10試合に出場してWGCワークデイ選手権での15位タイが自己最高成績でした。ベスト10の常連選手にとっては不満足だったに違いありません。

 では、なぜメジャー1戦目のマスターズで頂点に立つことができたのか。不振だったスイングやショット、パットをどのように修正してオーガスタの舞台に立ち、優勝を引き寄せたのかを解説していきましょう。

 まずドライバーショットですが、頭の上下動のない安定したスイングが松山選手の持ち味です。下半身の動きも実に安定しています。

 スタンスは肩幅強とワイドであり、バックスイングでは正面から見た右足の角度がトップスイングまでまったく変わりません。ワイドスタンスはスイング軸の横振れを抑制するとともに、トップスイングからの切り返し以降はターゲット方向へスムーズに踏み出せる利点があります。

 今年に入ってからのスイング変化としては左足の踏圧(プレッシャー)が強くなったように思います。強い踏圧によって切り返した瞬間、ボールの上にスイングのアンカー(首の裏の支点部分)が届いています。それによってドローもフェードも薄い曲がり幅でコントロールできるように進化したのです。

 読者の皆さんがワイドスタンスでバックスイング時に右へ移動し過ぎるのは、危険が伴います。それは、切り返し以降に左へ戻すのが遅れ、スイングプレーンが左に向くいわゆるカット軌道になりやすいからです。プレーンが左に向き過ぎるのは、パワーロスや大きな曲がりにつながるネガティブ要素と化します。スイングの支点がボール付近で安定することで、飛んで曲がらないドライバーショットになることを理解してください。

 マスターズでの松山選手のアイアンショットは切れていました。圧巻だったのは第3ラウンドの後半(6アンダー)であり、特筆すべきは15番パー5での2打目です。ロングアイアンでグリーン左サイドのピンに対し、さらに左からコントロールされたフェードボールで右ピンハイにピタリとつけてイーグル奪取。続く16番パー3ではスリークオータースイングで右ピンのショートサイドにピタリと止めてバーディー。17番パー4でもバーディーを奪い、優勝への流れを大きく引き寄せました。

 フェードと聞くとカット球のイメージが強いかもしれませんが、松山選手のそれは、つかまえたフェードボールです。インパクト以降、両肩を縦に回転させて振り抜きます。インパクトからフォローにかけて、顎の下に右肩がスッと入ってくるイメージでスイングしていました。

 肩の縦回転はフェースが良くも悪くも返りにくく、ボールがつかまらない可能性も高くなります。しかし、マスターズ週ではダウンスイングからインパクトにかけてクラブは下に動き、正面から見て軸が右に倒れようとするのを抑え、右サイドを上げながら打つことで、しっかりとつかまったフェードボールを打つように改善されていました。

 フォロースルー、フィニッシュで右肩を上げている松山選手が印象に残っています。その姿はタイガー・ウッズ(米国)のパワーフェードを彷彿(ほうふつ)させます。難易度の高かった今年のオーガスタを制することができたのは、アイアンショットの貢献度が大きかったと思います。

 ■石井忍(いしい・しのぶ) ゴルフツアーコーチ。1974年8月27日生まれ、千葉県出身。日本大学ゴルフ部を経て、98年プロ転向。2010年コーチに転身し、久保谷健一、大江香織、金田久美子、薗田峻輔らを指導。千葉でゴルフアカデミー『ACE GOLF CLUB』を主宰。

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