記事詳細

【田所龍一 虎番疾風録 Vol.104】「やっとボクも普通の選手に戻れます」小林繁“けじめの一戦” (2/2ページ)

 昭和55(80)年夏、初めて小林と江川が相まみえた。「去年、巨人への意地は果たした。でも、江川との対決が終わらなければ、本当の“阪神の小林”になれない」と言っていた待望の対戦だった。

 朝からの雨でぬかるんだマウンド。滑る人工芝。五回に山倉和博のボテボテの当たりを人工芝に足を取られて一塁へ悪送球したのがつまずきの始まり。続く河埜和正のバントも二塁へ悪送球し無死一、三塁。ここでなんと江川に中前タイムリー。さらに1死満塁から篠塚利夫(和典)に左前2点適時打され“独り相撲”で自滅してしまった。

 「これでやっとボクも普通の野球選手に戻れます。自分でまいたタネでないのにいつも人の興味にさらされて…。もうボクと江川、ボクと巨人のことは終わりです」。小林の中の“けじめの一戦”が終わった。(敬称略)

 ■田所龍一(たどころ・りゅういち) 1956年生まれ。大阪芸大卒。サンケイスポーツに入社し、虎番として85年の阪神日本一などを取材。産経新聞(大阪)運動部長、京都総局長、中部総局長などを経て運動部編集委員。「虎番疾風録」のほか、阪急ブレーブスの創立からつづる「勇者の物語」も産経新聞(大阪発行版)に執筆中。