「燃える闘魂」こと、格闘技界のカリスマ、アントニオ猪木さんが、今夏の参議院議員選挙に出馬を表明いたしました。
苦戦が伝えられる「日本維新の会」からの出馬ということで、一部マスコミの中には「話題作りのため」と冷ややかに報じる向きもありますが、ご本人はいたって大まじめであります。
参院選出馬の記者会見の2カ月前から、2度ほど猪木さんご本人と直接お会いしてお話をしておりますが、話題は格闘技ではなくて政治の話ばかりでした。
多分、猪木さんは格闘技の世界では、もはや「やりたいことはやり尽くした」のであると思われます。
日本中を沸かせたモハメド・アリとの世紀の一戦。観客が誰もいない中での巌流島での戦い。
アマゾン密林でのジャングルファイトに、10万人の観客を敵に回した敵地、パキスタンでの死闘。さらには、国交のない北朝鮮での世界初のプロレス格闘技大会−などなど。猪木さんにまつわるリング上のエピソードは枚挙にいとまがありません。
彼の持つ爆発的エネルギーには、心より感服いたします。
このような前人未到の輝かしい格闘技経歴を積み重ねた猪木さん。
現在は、ご自身が主催する「IGF」でプロレス興行を行い、格闘技界で相変わらずその存在感を発揮しています。
しかし、かつてのような大きなムーブメントを起こすまでには至っていません。このタイミングで選挙に打って出ようというのは、退屈で物足りない現状を打破しようという思いがあったのでは、とお察し致します。
アントニオ猪木さんは皆様ご存じの通り、立志伝中の苦労人中の苦労人です。ブラジルから力道山氏にスカウトされ、力道山氏の付け人として理不尽なシゴキに耐え抜きました。そして、鳴かぬホトトギスを鳴かせたり、鳴くまでまったり、たまに殺してしまったりして、新日本プロレスを創設。プロレス黄金期を築き、格闘技界のカリスマにのし上がりました。
地位も名誉もでき、暇ができると政治に興味をもたれる人は多いものであります。なかば、道楽で、成功者が参院議員に立候補する人もまた結構多い。気まぐれにつきあわされる家族や周りの後援者は、結構大変なのでありますが、猪木さんはまた別。これほどのカリスマは何をやっても許される一種の免罪符を持っているのです。
北朝鮮の首脳陣と直線的なホットラインを持つ猪木さんです。北朝鮮、韓国、そして日本の友好の架け橋になられることを期待し支援していきたいと思います。 押忍!
■石井和義(いしい・かずよし)空手団体「正道会館」宗師で、格闘技イベント「K−1」創始者。著書に「空手超バカ一代」(文藝春秋刊)がある。