相撲人気が盛り返してきた。場所前の段階で前売り券の売り上げが去年より8000万円も上回った。名古屋場所担当部長の千賀ノ浦親方(元関脇舛田山)は「番付発表からの1週間だけで5000万円アップです。自分たちもビックリしていますよ」と目を細め、その原因をこう分析する。
「久しぶりに3横綱が誕生、稀勢の里も勢いを取り戻してきたなど、いろいろありますが、やはり遠藤効果でしょう。近場の石川県出身ということもあって、ファンの関心は想像以上。ありがたいことです」
それを如実に示しているのが取組にかかる懸賞だ。初日とこの日は結びの白鵬戦に次ぐ本数がかかり、2日目、3日目はその白鵬戦を上回って幕内NO・1。平幕力士にこんなに懸賞が殺到するのはまさに異例だ。
ところが、皮肉なことにこれが遠藤には逆風に。現役時代「平幕の懸賞王」と言われた高見盛の師匠、先代東関親方(元関脇高見山)はこう嘆いたことがある。
「ある力士にこう言われたよ。今まで最高に取った懸賞は2本だった。ところが、高見盛に勝ったら10本ついてきた。こりゃ、横綱に勝つより高見盛を倒す方がずっと楽でいいやって。みんな、高見盛には懸賞目当てに目の色を変えて向かってくる。厳しいですよ」
これと同じ現象が遠藤にも起こっている。初日、パワーに圧倒された照ノ富士は明らかに懸賞目当てで「今日は勝ち星より懸賞狙いだった」と白状している。
この懸賞ハンターたちの攻めをハネのけるにはガムシャラにいくしかない。見栄や外聞を気にしてはいられないのだ。しかし、それに徹しきれないのが入幕6場所目の未熟さかもしれない。この日も豪風の狙い澄ましたようなハタキに付いていけず、両手を着いた。
これで3敗目。支度部屋では目をつぶり、何も答えなかったが、このドロ沼から抜け出せるか。苦闘は続く。 (大見信昭)