−−サンパツ戦国時代−−
〜1000円店攻防!〜(2)

「腕があってこそ職人」と反撃開始

15分1000円で反撃に出た「スマイルグループ」
15分1000円で反撃に出た「スマイルグループ」は、目立つのぼりを作製した
◇一気に競争が激化!

 「10分1000円、カットのみ」に特化、「待ち時間のカット」にも成功し、勢力を伸ばしているのが格安理容チェーン「QBハウス」。

 一方、「店で客が大勢待っているのは、実はうれしいもの」と理容師の心の内を代弁するのは全国理容組合の元講師、菅沼邦夫さん(70)。

 菅沼氏は「QB−」への対抗を阻害する要因として、「横並びを是とする業界の体質」のほか、「職人独特の心理」を指摘する。

 「待たされる客は苦痛でも、客が大勢いれば商売人としてウキウキする。また、職人は1人の客のホメ言葉で『すべての客が同じことを思っている』と思い込む傾向がある。例えば『アンタの顔剃りは天下一品』とほめられれば、皆がそう思っているとね。でも、顔剃りがイヤだと思っている人も多いのです」

 こうした“職人気質”は、自分の腕にプライドと自信がある裏返しだが、「たまに客から批判されようものなら『技術の分からない客などいらん!』となる」という困った一面も…。

 そんな中、「やはり、腕があってこそ職人」と、技を武器に立ち上がる組合加入店も現れた。

 「10分だけで丁寧な仕事をするのは無理」と、価格は1000円ながら15分の時間で勝負に挑むのが、小田急相模原駅周辺の組合加入店8店で形成する「スマイルグループ」だ。

◇同額で丁寧、「15分カット」」で対抗

 同グループ代表の齋藤巌夫さん(63)は「平成大不況の下、理容に金をかけられないという人も増えている。そんな人にもいいカットで喜んでもらいたいと思い、15分1000円のメニューを加えた。熟練の技術者も丁寧に仕上げるには最低15分は必要」と話す。

 菅沼氏も「理容師は髪の固さや張り具合、つむじを起点とした髪の流れなどを計算しながらハサミを入れる。10分以内では髪を単に短くするだけの単純作業になってしまう」と力説する。

 今年5月から始まった15分カットだが、「順調に客足が伸びている。ありがたいことに、今まで顔剃り、洗髪込みの常連客が『カットだけにしてほしい』と希望するケースは皆無。QBに流れていた客が戻ってくれたようだ」(齋藤氏)。

 こうした動きは各地で広がりを見せる。

 5月に「QB−」が小田急線・町田駅前に出店した東京都町田市では、町田理容組合支部長の藤井孝行さん(53)が「年配の客がQBに流れている」と分析。通常より2割安の「シルバー料金」設定に踏み切った。

 同駅前などで格安理容店「アダム」など10店を経営する内田大二郎さん(54)も「値下げで対抗する」と意気込む。

 齋藤氏は「苦しい立場に追い込まれているが、ある意味でQBには感謝したい」と前置きして、こう宣戦布告する。

 「理容業界はQBという“異業種”が参入して成長するという屈辱を初めて味わった。QBの大胆な発想は立派だが、おかげでわれわれも目覚めることができた。勝負はこれからです」

(久保木善浩)


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