−−激突!総選挙−−
〜「あの人」は勝てるのか(5)〜

山形3区 加藤 紘一(64)

「政界のプリンス」加藤紘一氏。情勢は苦しいが…
「政界のプリンス」加藤紘一氏。情勢は苦しいが…
◇「政界のプリンス」が650回もの「おわび行脚」

 650回−。「政界のプリンス」加藤紘一氏(64)が議員辞職後の昨年6月から、敢行した「おわび行脚」の回数だ。

 「将来の宰相候補」と期待された加藤氏が転落したのは、平成12年11月の「加藤の乱」。当時の森内閣不信任案採決をめぐって、失脚した。昨年1月には、金庫番だった佐藤三郎元秘書の脱税事件が追い打ちをかける。さらに、自宅マンションの賃料を政治資金でまかなっていた問題まで発覚し、参考人招致された後の同年4月、「大変な政治不信を招いた」と、議員辞職した。

 以来、続けてきたのが、おわび行脚。「じっくりひざを突き合わせて意見交換できる」(加藤事務所)と、5人、10人といったミニ集会を1日数回こなす。ここ10年、なかった光景だ。

山形3区
斎藤 淳34民現
加藤 紘一64無元
佐藤 雅之31共新
 だが、逆風は止んでいない。後援会のぐらつきがある。昨年12月、後援会連合会の会長と副会長が相次いで辞任した。

 「2人の辞任は愛子夫人(57)との確執だったとされる。夫人が佐藤元秘書を重用しすぎたため、2人は嫌気がさしたようだ」(地元関係者)

 さらに、「地盤の酒田市と鶴岡市のうち酒田は完全に支持者が離れてしまった。鶴岡も市長選が同時にあるため、現職市長は加藤氏を応援するだろうが、後援会組織はガタガタだ」(同)。

 加藤氏辞職後の補選では、酒田出身の民主党の新人、斎藤淳氏(34)が初当選、酒田は今や完全に斎藤氏の牙城(がじょう)と化している。

 「若い斎藤氏は『めんこい』と婦人層に人気がある。対して加藤氏は今も苦労を知らないボンボン然としていて、自分は政治家なんだというところが目につき、嫌気をさしている地元の人間は多い」(県政関係者)

 加藤氏も「特に(反応が)きついのは、後援会幹部、地元議員や建設業者の皆さん。農家の50歳前後の人も…」と話し、「2度目の初陣を戦います」と声を枯らす。

 選挙区の区割り変更も影響する。加藤氏が立候補する新山形3区は、鶴岡、酒田など庄内地区(旧4区)に、新庄市を中心とする最上地区(旧3区)の一部が加わる。旧3区には、5日に引退を表明した自民の近岡理一郎氏(77)がいた。

 「加藤氏は最上地区にも事務所をおいていたが、近岡氏が態度をはっきりさせなかったので、なかなか動けなかった」(県政関係者)

 ただ、「近岡氏は、加藤氏の盟友、山崎拓副総裁から引退するよう圧力をかけられていた」(同)とされ、近岡氏の支持票がそっくり加藤氏に流れるのかは疑問だ。

 秘書らを県議や市議にして地元で帝国を築いてきた加藤氏。自民党県連は今月6日、党本部に加藤氏の複党を要請し、9日には推薦する方針を決めたが、弱り目にタタり目で、「YKKと呼ばれたが、加藤グループの議員も冷めている。党に戻っても居場所はない」(自民党関係者)。

 系列県議、市議のネットワークも動きが鈍いのも不安要素だ。

 そのため、加藤氏は自民党総裁選前、小沢一郎氏や鳩山由紀夫氏と接触を図っていたとされ、「民主との連携」というカードをちらつかせた。関係者の大半は「民主移籍はありえない」と否定するが、そこまで加藤氏が追い込まれているということだろう。

 前回(12年)の総選挙では、13万票を獲得し、次点に3倍以上の差をつける圧勝だったが、その勢いは今は昔の話だ。

(梶川浩伸)


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