【激震2010 民主党政権下の日本】実は日銀の「援軍」ではなかったバーナンキFRB議長の来日講演

2010.05.28

 来日中のバーナンキFRB(米連邦準備制度理事会)議長は26日、「中央銀行の独立性、透明性と説明責任」と題して、日銀本店で講演を行った。

 各紙の見出しは、「中銀の独立性強調」だった。この見出しだけ読むとミスリーディングだ。実は、バーナンキ議長は、「独立性」の意味を限定的に用いている。それは、講演草稿のはじめに「金融政策の目標は政治的に設定されるが、目標達成へ金融政策をどう実行するかは、政治的なコントロールから自由であるべきだとの幅広いコンセンサスが世界的にできあがってきた」と書かれている。

 さらにその注では「『目標の独立性』(goal independence)と『手段の独立性』(instrument independence)の違いは有用だ。中央銀行が自由に目標を設定できるという目標の独立性を民主主義社会で正当化することは困難だ。しかし、今日これから話すように、中央銀行が干渉を受けずに適切な金融政策を実施できるような手段の独立性は、経済安定のために極めて重要だ」と書かれている。つまり、バーナンキの独立性とは手段の独立性だけを指している。この点、白川方明日銀総裁のスピーチでは、単に独立性というだけで、あたかも目標の独立性まで含んでいるかのような話だったことと好対照だ。

 ちなみに、現在の日銀法は、目標の独立性まで日銀に与えており、バーナンキのいうように民主主義社会では正当化できないものだ。この点を私はバーナンキ本人に説明したことがあり、彼も十分に承知している。

 一部マスコミの報道では、政府がインフレ目標を日銀に要求することが、あたかも日銀の独立性に問題があるかのようであるが、目標の独立性と手段の独立性の違いを知らない不勉強によるものだ。世界のコンセンサスは、目標の独立性がないのだからインフレ目標を中央銀行が拒否すること自体がおかしいし、目標の独立性まで与えている日銀法そのものがおかしいのだ。だから、政府がインフレ目標を日銀に求め、そのために日銀法改正をするのは、バーナンキのいう世界のコンセンサスに日本も合わせるだけなのだ。

 また、バーナンキ議長は、量的緩和について、普通の金融政策と同じような効果があるので、手段の独立性を確保せよと論じていることも面白い。日銀寄りのマスコミ報道では、これを政府から金融緩和策を求められる日銀への援軍と報じているが、そうではない。今まで日銀は量的緩和の効果はないといってきたのに、普通の金融政策と同じ効果と言われたので、さぞ困っているだろう。

(嘉悦大教授、元内閣参事官・高橋洋一)

 

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