なぜ小沢夫人は“絶縁状”で一刺ししたのか

2012.06.29


師と仰ぐ田中角栄元首相と同じく“一刺し”に見舞われた小沢氏【拡大】

 民主党の小沢一郎元代表の夫人が支援者にあてて書いたとされる手紙が話題。手紙には「大災害後政治家が真っ先に立ち上がらなければならないのに、小沢は放射能が怖くて秘書と逃げ出した。岩手で長年お世話になった方々が一番苦しい時に見捨てて逃げ出した小沢を見て、日本のためになる人間ではないとわかり離婚した」旨、便箋11枚にわたり夫への非難と離婚経緯がつづられている。

 すぐに思い出したのは田中角栄元総理の裁判で、E首相秘書の妻が、夫E氏らに決定的に不利な証言をした件。当時、その妻が言う「ハチは一度刺したら命を失う」(ハチの一刺し)が流行語になった。

 今回、その手紙が真実ならば、夫人がなぜ小沢議員に不利なことを言ったのか。本日はこの点について視界良好としたい。その読み解き鍵は「ハチの一刺しに、すきま風の前兆」。

 まず、一般論として「身近な秘書とボスの政治家」の例で考えてみる。

 私は、秘書がボスを裏切るケースには2つの条件があると思う。(1)秘書が日頃ボスに対し嫌悪感を抱いていること(すきま風が吹いている)(2)ボスの力が既に落ち、あるいは今後力を失うと思っていること(力の喪失)である。

 自分のボスを強固にかばう秘書であっても、例えば捜査が進展し、ボスが今後力を失うと感じ、さらにボスに対し日頃嫌悪感を抱いていれば、ボスの犯罪関与を話し始めることがある。

 小沢夫人が秘書的な役割を果たしていたとすれば、今回も秘書とボスの関係と見ることができる。とすれば、今回、夫人がこの手紙で小沢氏を裏切ったのは、(1)かねて「政治家・小沢一郎」を面白く思わず、すきま風が吹いていたこと(2)夫人において小沢氏の政治力が失われつつある、あるいは失われても構わないと思っている−の2条件が備わった可能性があると思う。

 今回はさらに夫婦という身近な関係も付加される。夫婦間では、かねて心にすきま風が生じていても意外と破綻近くまで表面化せず、離婚裁判になって初めて相当前から相手が自分に嫌気がさしていたと思い知らされることがある。とすれば、夫人はかねて「夫・小沢一郎」に対しても嫌悪感を抱き、すきま風が吹いていた可能性がある。

 夫人は、放射能怖さで逃げた点を離婚理由にするが、それは離婚への最後のきっかけに過ぎず、かねて「政治家」および「夫」の両面に、すきま風を感じていたのではないか。

 それにしても、この手紙内容が真実とすれば、放射能に関して小沢氏が自己中心的な人と連想させてしまうが、これが小沢氏の今後の政治力にどの程度のハチの一刺しになるだろうか。身近であるべき妻に裏切られるとすれば寂しいことである。

 ■若狭勝(わかさ・まさる) 元東京地検特捜部副部長、弁護士。1956年12月6日、東京都出身。80年、中大法学部卒。83年、東京地検に任官後、特捜部検事、横浜地検刑事部長、東京地検公安部長などを歴任。2009年4月、弁護士登録。座右の銘は「桃李言わざれども下自ずから蹊を成す」。

 

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