歯を食いしばって勉強を続けて7年が過ぎた。じつは小谷医師、5年間の研修が終わったら福岡に帰るつもりだった。
「がんセンターに来て2年目の冬に父が血液のがんになり、4年目の冬に他界したんです。病気の進行によって変遷する父の症状と、それに伴い移ろう母や私自身の感情を、身をもって知った。この経験をがん治療医として生かしたいと考え、ここに残って仕事をさせてもらいたいと思うようになったんです」
がんの個別化医療の確立を目指す臨床試験に取り組む一方、「生涯、臨床医でありたい」と考えるように。
「将来どんな立場になっても、いま学んでいる、そしてこれから学ぶ知識と経験を、その時に目の前にいる患者さんの求めに合わせて活かしていきたい。それがいまの夢ですね」
照れくさそうに笑うその表情に、「おばあちゃん思いの少年」の面影が浮かんだ。 (長田昭二)
■小谷大輔(こたに・だいすけ) 国立がん研究センター東病院消化管内科医員。1984年、熊本市生まれ。2009年、北海道大学医学部を卒業後、福岡市民病院、北九州市立医療センターに勤務。14年国立がん研究センター東病院レジデント、17年、同院がん専門修練医、19年から現職。日本消化器病学。
