SNSなどの普及により、飲食だけではなく、すべての商売においてブームを作るよりも、長続きさせるのがとても困難な時代だ。人生レベルの「商い」が作りにくい。
「町中華ブーム」は、その反作用だと思う。店と客が長いスパンで穏やかな関係を築き、ゲームやイベントでもなく、無意味な気づかいのない、当たり前のおいしさへの原点回帰だ。
話題の超人気ラーメン店のように長い行列ができることはないが、何十年と、いつもお客さんが入っているような町中華のような商いが、結果的には勝者かもしれない。
私たちのエンタメ業界でも同じだ。ひと昔は、何かヒット作に恵まれればその勢いで5年くらいは「商い」を続けられた。だから大手芸能事務所側も設計図を描くことができた。
だが、今ではSNSなどで何百万アクセスという「情報劇」が不測に起こることもあり、プロ中のプロであった大手芸能事務所側も、霧の先を見通すことができない。
昨今、タレントの大手事務所からの独立が増えているのも、そもそも五里霧中ならば、多少つらくとも自分でかじを切っていきますという気持ちなのかもしれない。
■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。YouTube公式チャンネル『大鶴義丹の他力本願』も更新中。
