最終的に端正な顔立ちをしたハンサムな白人男性が乗客全員にカーテンを閉めさせ、「これで見られることはない」と女性を諭したことで丸く収まった。私もハンサム男の指示に従い、隙間ができないように窓のカーテンを閉めた。モテるヤツとモテないヤツの差が浮き彫りになったような気がして、こっそりのぞくなんてことをする勇気は出ない。
しばらくすると、わらと竹と木で作られた掘っ立て小屋が十軒程度並ぶ小さな集落でバスが止まり、そこで小休憩をすることになった。男たちは今の時間は働きに出ているのか、集落には女の人しかいない。彼女たちは川で洗濯をしていた。今の時代、そんな昔話みたいな光景があるのかと思ったが、それだけではない。全裸になり、洗濯をするついでに川の水で風呂に入っていたのだ。
バスの乗客たちは男女ともにその様子にくぎ付けだが、集落の女性たちにこちらを気にする様子はない。それからというもの、バスの運転手に文句をたれる乗客は誰もいなくなった。おもむろにバスが止まると勝手に外に出ていき、女性もそのへんの岩陰や草むらで適当に用を足すようになった。
■國友公司(くにとも・こうじ) ルポライター。1992年生まれ。栃木県那須の温泉地で育つ。筑波大学芸術学群在学中からライターとして活動開始。近著「ルポ 歌舞伎町」(彩図社)がスマッシュヒット。