外科手術と放射線――局所を抑える「基本の治療」
治療方法として、まず挙げられるのは「外科手術による切除」だ。がんが局所にとどまっている場合、最も効果が高いという。ただし口腔内の場合は、腫瘍を完全に切除するために顎の骨の一部を一緒に削るという大規模な手術になるケースも少なくない。
手術での完全切除が難しい場所にある場合や、高齢で麻酔のリスクが高い場合に選ばれるのが「放射線治療」。メラノーマは比較的放射線が効きやすい(感受性がある)腫瘍とされており、腫瘍の縮小や痛みの緩和など、愛犬の生活の質(QOL)を維持する上で大きな役割を果たす。
東大が挑む「最新の免疫療法」と、QOLを支える選択肢
メラノーマは目に見えないレベルの微小転移を起こしやすいため、手術後の再発・転移予防をいかに行うかが最大の課題となる。
そこで近年、新たな希望として注目されているのが「免疫療法」だ。
現在、東京大学附属動物医療センターなどで「免疫チェックポイント阻害薬(抗PD-1抗体)」を用いた臨床試験や治療が進められており、選択肢の幅は確実に広がりつつある。
また、体への負担を考慮して漢方薬やサプリメントといった代替医療(統合医療)を取り入れる飼い主も増えている。これらについては科学的根拠(エビデンス)にばらつきはあるが、かかりつけの獣医師と相談しながら本医療と併用することで、愛犬の食欲や元気を維持し、穏やかな時間を引き延ばすための一助として活用されている。
愛犬と家族が「後悔のない時間」を過ごすために
犬のメラノーマは、飼い主にとって極めて厳しく、スピード感を求められる戦いだ。しかし、医療の進歩によって「打てる手」は確実に増えている。
羽生九段の投稿と、そこに寄せられた温かいリプライの数々は、同じ病に立ち向かう多くの飼い主の精神的な負担を癒やす支えとなることだろう。愛犬の年齢や状態、そして家族のライフスタイルに寄り添いながら、QOL(生活の質)を最優先にした「後悔のない選択」をしていくことが何よりも大切なのだ。
