財務省の文書改竄(かいざん)をめぐっては、官僚が安倍晋三首相を忖度(そんたく)したというストーリーが多く語られているが、実際に財務官僚は政治家をそこまで恐れているものなのか。
今回の朝日新聞のスクープ記事は快挙だが、マスコミ報道全体について、まだ、安倍首相の関与に話を持っていきたいような印象操作の感がある。過去の本コラムでも、理財局長を務めていた佐川宣寿氏の国会答弁の間違いを指摘しており、「首相の関与という誤った方向に議論しなければ佐川氏のクビは取れたはずだ」と書いている。
それなのに、いまだにほとんどのマスコミは、佐川氏が安倍首相を忖度して書き換えたというストーリーのようだ。佐川氏が官邸を忖度したから国税庁長官のポストを得たという構図を指摘する向きもあるが、まずこの段階で疑問だ。
20年前の大蔵省スキャンダル以降、17人の国税庁長官がいるが、その本省最終ポストをみると、理財局長8人、主税局長6人、その他局長3人となっている。要するに、国税庁長官ポストは、主税局長と理財局長からの上がりポストだ。
事務次官は主計局長出身が多いが、主税局長から出ることもある。そして次官になれなかった主税局長は国税庁長官になる。理財局長からは事務次官になれないが、国税庁長官にはなれるというわけだ。この意味で、佐川氏が国税庁長官に就任したのは、ごく普通の人事である。
もし佐川氏が官邸に忖度して、それが受け入れられたなら、もっと上のポストについていてもおかしくない。逆にいえば、財務省内ではこうした独自の人事システムがあり、政治家も手が出せない「独立性」が保たれているといってもいい。