分断の象徴ゆえ可能だった米朝電撃再会 打って付けの演出

【ソウル=桜井紀雄】30日午後3時45分ごろ、トランプ米大統領は、朝鮮半島の南北軍事境界線がある板門店(パンムンジョム)で、韓国側施設から姿を見せ、北朝鮮側に向かって1人で歩きだした。北朝鮮側施設から黒い人民服姿で現れた金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長もゆっくり近づき、境界線を挟んで再会した。

「ここで会えるとは思っていなかった」と満面の笑みをたたえて話す金氏の背中に、トランプ氏が親しみを込めて腕を添えた。その後、ためらうこともなく、金氏と肩を並べて北朝鮮側に十数歩“越境”し、握手して再び韓国側に戻った。

トランプ氏が当初、「2分程度」でもとしていた対面は53分間に及んだ。

「史上初めてわれわれの地を踏んだ米大統領となった」。金氏は、今回の対面をトランプ氏の「英断の表現だ」とたたえ、「敵対関係にあった両国が平和の握手を交わしたこと自体が昨日とは違う今日を表す」と強調した。

トランプ氏も「多くの進展があり、強固な友情が築かれた。私と金委員長は出会った初日からお互いに好きだった」と応じた。

東西冷戦の傷痕であり、南北分断の象徴でもある板門店での米朝首脳の握手は、2月の首脳会談の物別れにより双方の国内や国際社会でくすぶる不満や非核化交渉への不信感を拭うのに打って付けの演出だ。

わずか1日で米朝首脳の再会を可能にしたのは、米朝韓などの軍事当局によって完全に統制されている特殊な地域だからという皮肉な背景もある。北朝鮮は30日に急遽(きゅうきょ)、観光客の立ち入りを禁じる措置を取った。

一方で、軍事分野の南北合意に基づき、板門店の共同警備区域(JSA)内の自由往来に向けた協議が行われてきたが、北朝鮮が米軍の介入を嫌って協議が膠着(こうちゃく)化している現実もある。(産経新聞)

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