■小池知事の思惑どおり
さらに、よく思い出してほしいのは、小池知事が5年前、「1兆2兆ってお豆腐じゃあるまいし」と大見えを切って、「五輪会場見直し」と騒いだ揚げ句、結局一つも見直せなかったあの騒ぎだ。小池氏が「見直し」を言ったのは、まさに「東京都が五輪のカネを出す主催者」だからに他ならない。それをいま、「無観客」での減収分の補填(ほてん)を国に被せようとしているというからあきれ返る。
小池氏は、二階、山口両氏への根回しの後、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長とも長時間会談している。こうして「無観客」の流れを決めた。
一方の菅首相は、「大の苦手」と伝えられる小池氏の独断専行を押さえ込むどころか、閣僚らの問題発言というオウンゴールで、大事な局面でのリーダーシップを完全に失った。
そして、小池氏の思惑どおりに、緊急事態宣言、五輪「無観客」化に押し切られたうえ、小池氏が巧妙に陰へ回ったため、緊急事態宣言も無観客化も「首相が一人で決めた」かのように世間に誤解されている。
謹んで菅首相に申し上げたい。一刻も早く、党執行部を刷新し、官邸の広報体制を入れ替えるべきだ。さもなければ、東京五輪「無観客」による、カネと政局、両方のツケをご自身が被ることになるだろう。
■有本香(ありもと・かおり) ジャーナリスト。1962年、奈良市生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌の編集長や企業広報を経て独立。国際関係や、日本の政治をテーマに取材・執筆活動を行う。著書・共著に『中国の「日本買収」計画』(ワック)、『「小池劇場」の真実』(幻冬舎文庫)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』『「日本国紀」の天皇論』(ともに産経新聞出版)など多数。
